こんにちは、先日交差点の歩道を渡るときに娘が手を上げて渡っていると、保育園の子ども達がそのマネをして手を上げていて、付き添いの先生に「お姉ちゃんのマネできたね!お姉ちゃんありがとう!」と言われて誇らしげな顔をしている娘を見てこちらも誇らしい気持ちになった木村です。
本記事は、先日のMicrosoft AI Tourで参加した「今日から始めるAIエージェント開発」セッションについてのレポートです。登壇者はマイクロソフトの上野氏と稲葉氏でした。
AIエージェントのビジネスインパクト
まず最初に、AIエージェントのビジネスインパクトについて説明がありました。AIエージェントは、従来のチャットボットとは異なり、より高度な自律的な行動を可能にする技術です。これにより、業務プロセスの効率化や新たなビジネスモデルの創出が期待されています。
AIエージェントの4つの特徴として、以下のものが挙げられました。
- 自立性: ユーザーの指示がなくても目標達成に向けて自律的に動作
- 目標指向: 単なる応答ではなく、明確な目標を達成するための行動を取る
- 高度な推論: 複雑な状況を理解し適切な判断を行う能力
- 外部連携: 他のシステムやAPIと連携して機能を拡張できる
ここで例としてあげられたのが、テストコードを書いてもらうようなケースでした。単純にテストコードの記述を依頼するのではなく、記述したテストを動かし、エラーが出たら修正するところまで自律的にやってくれるのがエージェントとなります。GitHub Copilotのエージェントモードはまさにこのような機能を実現しています。
他にも事例として、デンソー様やTOYOTA様での実装事例が紹介されました。
実践AIエージェント開発
次に、実際のエージェント開発のプロセスを説明するにあたり、サンプルとして新入社員のオンボーディングを支援するシステムが紹介されました。
具体的には、UIからユーザーの要求を受け付け、コーディネーターエージェントが全体を統括し、複数の専門エージェントが協調して課題を解決するというシステムです。
開発プロセス
開発プロセスは以下のように段階的に進めると説明されました。
1. アイデアソン
ビジネス課題を特定し、AIエージェントでの解決案を検討する段階です。アイデアを出し合い、ビジネスインパクトを評価します。
2. フィジビリティスタディ
アイデアを現実的な企画に育てる段階です。技術的、経済的、法的、運用面からの評価を行います。
また、この時点でAIに相談して実現可能性を探ることや、Playgroundなどのツールで簡易検証を行うことが推奨されました。
3. PoC(概念実証)
次に、実際のプロトタイプを作成する段階です。以下の要素が重要であると述べられました。
- 基本的な構成要素の整理
- インターフェース設計
- ワークフロー型エージェント: APIを活用した自動化向け
- コパイロット型エージェント: UI主体の品質・生産性向上向け
- ナレッジベースの構築(LLMの知識補完)
- ツール連携の実装
- 既存APIの活用
- 既存エージェントとの連携
- 認証管理(ファサードパターンの活用)
- オーケストレーション方式の選択
- Azure AI Agent Serviceのようなマネージドサービス
- AutoGenなどのエージェントフレームワーク
- 独自オーケストレーション
- KPI設定と測定方法の確立
他のセッションでも、Azure AI Agent ServiceをAI Foundryから利用するデモが紹介されていました。非常に簡単かつ短期間にエージェントを構築できそうなので、後日実際に試してみようと思います。
そして、PoCは概念実証だから試しに作って終わりとなるケースも多いのですが、PoCだからこそ次に進めるかどうかの判断のためにKPIを設定し、そのためのデータ収集方法と集計方法を考えておくのが重要と言われたのが印象に残りました。
4. 継続的な開発と運用
マルチエージェントを視野に入れたプラットフォーム設計を行います。複数のエージェントを構築すると、機能やリソースが重複することがあります。その際、共有資源の再利用による効率化を図ることが重要です。
また、最初から完璧なエージェントを作るのは難しいので、継続的にエージェントを育てていくのが重要であると述べられました。そして、継続的に進化させるためにはCI/CDのプロセスを準備することと、PaaSを使うことのメリットが強調されました。
セキュリティとガバナンス
そして、実運用に向かうために重要なのがセキュリティとガバナンスです。以下のポイントが挙げられました。
- 業務データを扱う際のセキュリティ配慮
- 開発環境と実行環境の一体設計による効率性の維持
- 「野良エージェント」防止のためのLanding Zone構築
- ガバナンス体制の整備
- セキュリティポリシーの適用
エージェントを比較的容易に作ることができ、効果があることが分かってくると、どうしても組織全体で見ると「勝手に作られて動いている野良エージェント」が増えがちです。そのため、早い段階からガバナンス体制を整備し、セキュリティポリシーを適用することが重要だと述べられました。
まとめ
AIエージェント開発は単なるチャットボットの延長ではなく、ビジネスプロセスを変革する可能性を秘めています。今回のセッションでは開発プロセスの具体例が示され、大変参考になりました。
個人的には単に検証をして終了にならないためにPoCの段階からちゃんとKPIを考えて計測を行うことと、継続的な開発と運用を意識することが重要だと感じました。また、セキュリティとガバナンスを初期から考えることも重要であると強調されたのが印象的でした。これらはエージェント開発だけではなく、多くのツールの導入や開発においても重要なポイントだと思います。
皆さんの参考になれば幸いです。