この記事はオルターブース Advent Calendar 2024の10日目の記事です。
ブログのテーマに一貫性がないことですっかりおなじみの木本です。 毎年何を書こうかと悩みながら、ここ数年はライトな技術系の記事を書いていましたが、今年は少し趣向を変えて「ITエンジニアとして求められる適性」について、個人的な考えを書いてみたいと思います。
はじめに
早いものでITエンジニアとして働きはじめて24年も経つのですが、これだけ長くやってると「ITエンジニアになるにはどうしたらいいですか?」という質問を受けることがたまにあります。 いつか、こういう質問に対する答えになるような記事を書こうと思ってたのですが、なかなか気が進まなかったのは、そもそも僕がエンジニアになった時とは時代が違うからです。
また、過去の社員インタビュー記事でも話していますが、僕はなろうと思ってITエンジニアになったわけではありません。 学生時代に就職活動をしたこともないし、大学も超文系学部(しかも中退)だし、そもそも当時はITエンジニアが今のような人気職種ではありませんでした。
(過去のインタビュー記事はこちらです。あわせて読んでいただけるとうれしいです。) aadojo.alterbooth.com
文系でもITエンジニアになれるか?
相談される中で特に多いのは「文系なんですけどITエンジニアになれますか?」という質問です。 この質問、すごく簡単に答えると「なれます」。なぜなら僕がなれてるから。
個人的には、「文系・理系」という枠組みの中で話をするのはあまり好きではありません。 一般的には、単に「10代のある時期において数学が得意だったか、苦手だったか」という程度の条件でどちらかに振り分けられた人が多いのではないでしょうか。 少し調べてみると、この「文系・理系」というのは日本独特の区分のようで、そもそもは明治時代に作られた旧制高校の制度にその由来が・・・(以下略)・・・という細かい話はともかく、大学の学部構成を見てもわかるように、文系・理系と言ってもそれぞれカバーしている範囲がすごく広いです。 「文系です」と言っても、文学なのか、経済学なのか、はたまた哲学なのかで勉強する内容がまったく違います。
そもそも、世の中の仕事は「文系 or 理系」のような単純な分類でできているわけではありません。 近年需要が高まってきているデータサイエンティストという職種は文系と理系の両方の要素が要求されます。 そのような背景もあって、近年は「文理融合型教育」というものが推進されているようです。 もちろん、昔からある職種だって、簡単にどちらかに分類できるものではありません。
個人の資質や思考の傾向として「文系的・理系的」というものはあると思いますが、どちらかに100%振り切れてる人というのもあまりいないのではないでしょうか。 なので、あまり文系とか理系とかに限定せず、僕が考えるエンジニアの適性について書きたいと思います。
エンジニアに必要な適性
「ITエンジニア」と言っても仕事内容は多種多様で、細かく分けるとその種類は20種類ほどあると言われています。 その中には「コンピューターに近い仕事」と「人に近い仕事」があり、もし「コンピューターに近い仕事」をしようとするなら高度な理系教育を受けていないと就けないものもあるでしょう。 また、企業によってはエンジニア採用に理系学部出身という条件を付けているところもあるかもしれません。 ただ「情報システムを作るITエンジニア」という枠に関しては、「文系だから無理」ということはないと思います。
前述の通り、僕自身も文系学部(文学部外国語学科)でした。 仕事をする上で理系学部出身者には敵わないと思うことは多々ありますが、たくさんのプロジェクトで様々な役割を任されながら20年以上のキャリアを積むことが一応はできています。 こういった自分自身の経験も踏まえて思うのは、「ITエンジニアに必要なのは適性なのだ」ということです。 その適性とはなにか?というと、「コミュニケーション能力」と「論理的思考」です。
「そんなのどんな職業でも必要だろ?」と思われる方もいると思います。 そうです。どんな職業でも必要なので、ITエンジニアにも必要なのです。 もう少し詳しく書いてみたいと思います。
コミュニケーション能力
僕はシステム開発の仕事は「言い換える作業」だと思っています。
お客様の要望に沿ったシステムやアプリケーションを開発する場合、大まかに分けると「要件定義・設計・開発・導入」という4つのフェーズがあります。 おそらく皆さんがイメージしやすい「ITエンジニアのお仕事」は「設計」や「開発」でしょう。しかし、それ以外にも仕事はあり、それぞれのフェーズで必要とされるスキルがあります。
- 要件定義は「お客様の要望を言語化する」作業。
- 設計は「お客様の要望を開発エンジニアに伝わる言葉に言い換える」作業。
- 開発は「設計したものをコンピューターが実行できる命令に言い換える」作業。
- 導入は「システムの使い方をお客様に伝わる言葉に言い換える」作業。
これらの作業を必要なスキルに置き換えると
- 相手の要望を聞き出すこと(傾聴力)
- 自分が知りたいことを表現すること(質問力)
- 相手が話している内容を正しく理解すること(理解力)
- 自分が理解したことをほかの誰かに正確に伝えること(伝達力)
いずれも「読む・書く・聴く・話す」というスキルを適切に使う必要があります。 「読む・書く・聴く・話すのスキルなんて誰でも持っているよね?」と思われる方もいるでしょうが、これらのスキルを相手や状況に応じて適切に使い分けることが重要です。 これが本当に難しくて、20年以上この仕事をしていても「こういう聞き方をすればよかったかな」「あの言い方はまずかったな」と反省する毎日です。
また、多くの場合ITエンジニアは組織内で働きます。フリーランスの方でもなんらかのチームに入って仕事をすることがあるでしょう。そのため他者とのコミュニケーション能力は必須です。 「自分にはコミュニケーション能力がないからエンジニアになりたい」という意見を見ることがありますが、それは大きな誤解です。
近年成長著しい生成AIを一度は使ったことがある人も多いと思います。 生成AIにも様々な分野がありますが、特に自然言語を使う分野では、AIに対して適切な指示を与える「プロンプトエンジニアリング」という技術が重要となります。 「AIに指示を与える技術」と考えると難しく思えるかもしれませんが、その本質は「自分のやりたいことやその意図を、相手が理解できるように伝える」ことです。つまり、人を相手にするのとあまり変わりません。
AI(コンピューター)とのコミュニケーションに自然言語を使えるようになったので、対人の時と同じようなコミュニケーションスキルが必要になった、とも言えます。 なので、コミュニケーション能力が高い人ほど生成AIとうまく付き合えるのではないかと思います。
論理的思考
エンジニアには論理的思考力が不可欠です。 「論理的思考」とは事実や証拠に基づいて筋道を立てて考える能力のことです。複雑な問題を論理的に分解し、解決策を導き出すことを目的とします。 問題を「問題というカタマリ」のまま扱わず、どういう要素で構成されているのかを見出していくことが重要です。
先述の代表的な仕事である「設計」と「開発」では論理的思考が必須です。特に要件を設計に落とし込む際には論理的思考がフル回転します。なぜなら、要件(仕事や作業)というものは、必ずしも論理的に行われているわけではないからです。 論理的でない物事に対して「なぜそうなっているのか?」を問い、「ではどうすればよいのか?」を考え解決策を見出すのはかなり骨が折れます。時にはITの力を使わずに解決する方法を見出し、選択することも必要です。 しかし、これができるからこそ、ITエンジニアの存在意義があるのではないかと思います。それくらい重要な要素です。
近年人気が高まっている「ローコード開発」でも論理的思考が要求されます。 「プログラムを極力書かずに」アプリを作れることは事実ですが、「要件定義・設計・開発」という作業が必要な点は変わりません。 僕も数年前にローコード開発をやっていたことがありますが、従来型の開発よりも高度な論理的思考を要求されるような印象がありました。
ITエンジニアの仕事とは
以上2つが、僕の考えるITエンジニアとして仕事をしていくための最低条件です。 論理的思考に関しては、理系の勉強の中でかなり鍛えられるのではないかと思うので、そこは分があるかもしれません。 しかし、いずれも後天的に身に着けて伸ばすことができるスキルだと思います。
ITエンジニアの仕事は本当に様々です。 自分がどこを目指すのかによって、求められるものも変わります。
世界的IT企業で先端技術に関する研究をするのか。 中堅企業で顧客向けのシステム開発に携わるのか。 ユーザー企業の中で社内システムの企画・開発・運用に関わるのか。 スタートアップ企業で革新的なサービスを生み出すのか。
開発系エンジニアを目指すのか。 インフラ系エンジニアを目指すのか。 それともコンサル系エンジニアを目指すのか。
仕事の内容によっては高度な専門教育を受けていないと難しいかもしれません。 自分が入りたい企業の採用条件と合わないこともあるかもしれません。 しかし、コミュニケーション能力と論理的思考力を備えることができていれば、「ITエンジニアになる」という目標に対して扉が閉ざされることは決してないと思います。
自分だけのバックグラウンドが武器になる
弊社オルターブースはITエンジニアの集団だと思われているかもしれません。 しかし、オルターブースにたどり着くまでの道のりは様々で、まったくの異業種から転身して活躍しているメンバーもたくさんいます。 前職で培った知識やスキルの上に、ITエンジニアとしてのスキルが組み合わさることで「その人にしかできないエンジニア仕事」というものが生まれて武器になるはずです。 社員インタビューの記事では個性豊かなエンジニアたちの経歴を見ることもできますので、お読みいただくと何かヒントがあるかもしれません。
おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 この記事では、ITエンジニアに求められる適性として「コミュニケーション能力」と「論理的思考」の重要性について書きました。 この話題については、同じITエンジニアでも人によって意見が分かれるかもしれません。他のエンジニアの経験談やアドバイスも参考にしてみてください。 就活で悩んでいる方や、エンジニアへの転職を希望している方にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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